課題発見セッション (Discovery Session)

私の仕事はソフトウェアの技術営業ですが、一般的にはあまりイメージの湧かない職業の一つでもあります。形のないものに対して技術的支援を通して価値を与え、顧客に提供する仕事です。営業でもあり、技術者でもあるため、時に自分の仕事の範囲や深さに対し「これで良いのか?」と迷うこともあります。

私が思う技術営業の最も重要な仕事は、顧客の課題を引き出して解決策を提供することです。ところがこの「顧客の課題」というものがとても厄介なもので、通常はお客さんも正しく把握していないことが多いです。日々の業務に追われて、本質的な課題にまで落とし込む余裕がなかったり、組織の制約で自分の範囲しか見えていないことが多いからです。

これを「課題解決セッション(ディスカバリーセッション)」と銘打って、お客さんに時間をとってもらい、課題整理から提案までを実施することがよくあります。例えば他社事例を紹介しながらお客さんの現状を質問したり、お客さん側に議論してもらって意見を吸い上げたりします。その後、集めた情報を整理して、お客さんの課題感をまとめ、それに対する解決策を提案するといったパターンが多いです。

私がこのセッションを実施するときに意識しているのが、「いかにお客さんに気づきを与えられるか?」ということです。




マーケティングの世界では昔からあるフレームワークがあり、「AIDMA(アイドマ)」と呼ばれています。これは人がものを買うときの思考プロセスを示したもので、購買行動プロセスと言われます。人はまず知らないものを知ることから始まり、そのものに対する関心を深めます。それに対してもっと知りたいという欲求が深まれば、その人の記憶に残ることになります。そして人はそのものを買うという行動に移るというプロセスです。

お客さんが意見を言いやすい、議論をしやすい環境にするためには、まず環境を整えることが重要です。そのためには、まず参加者全員に基礎知識を提供し、同じ土俵・目線に立つという作業が必要と考えています。スポーツみたいなもので、今日はこのルールでやりますよ。というものが無いとゲームにならないからです。その次に重要なのが、お客さんの欲求を満たす雰囲気づくりです。ルールをいくら決めても難しすぎれば変える柔軟性も必要です。お客さんが楽しんでないと分かれば、時間を無視して1点を丁寧に説明したり、トピックを変えることもあります。

このように課題発見セッションも、AIDMAをお客さんに体験してもらうプロセスと考えることができます。短時間・短期間でもこのようなメリハリの効いたセッションの進め方ができるとお客さんの満足度も上がるのでは無いでしょうか?

何が正解か分からないこの仕事ですが、これがうまくできるかどうかが技術営業の価値にもつながってくる、とてもやりがいのある仕事だと思います。

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