車載ソフトウェア (Automotive Software)

業務ソフトウェアの世界に長くいると、そこで起こっていることが最先端だと思いがちですが、実はそうでもないことに気づかされることがあります。アジャイル開発に関しては製造業のモノづくりの技術を応用したものですし、様々な標準化のプロセスや運営方法などは、ハードウェアにおける標準化の仕組みと共通する点が多いです。

そのような中、組み込みソフトウェアの世界、特に車載ソフトウェアに関する研究資料を見ていると、業務ソフトウェア業界で起きている標準化競争の一歩先をいく激しい戦いが繰り広げられていることが分かりました。(参考:みずほ銀行による研究資料



車の業界はすでに「ソフトウェア・ファースト」の時代になっており、自動車の付加価値がよりソフトウェアやそれによるサービスに移っているということです。自動車メーカーや系列部品サプライヤーにより、ハードからソフトまでを垂直統合してすり合わせる、いわゆるインテグラルアーキテクチャから、ソフトウェアとハードウェアを中間のプラットフォームで分離し、ソフトウェアベンダーとハードウェアベンダーの水平分業が加速していくというビジネスモデルです。

このような世界では、いかにプラットフォームを標準化し、その上で動くソフトウェアやサービスを開発できるかが差別化の主戦場になるため、激しい主導権争いが起きています。他の業界と同様に、かつての自動車メーカーによる主導権とGAFAなどによるテクノロジー企業が、協業と競合の関係で競い合っている状況です。またスピードと品質を重視するため、このソフトウェア開発はスクラムによるアジャイル開発が一般化してきているようです。

これまではECU(Electronic Control Unit)と呼ばれる車載系組み込みシステムは、それぞれ車の部品ごとに分かれて配置されていて、高級車では100個以上あるECUを分散的に配備していました。これがソフトウェア・ファーストの時代になり、あらゆるECUを中央集権的に統合し、それらを制御するアプリケーションも、ビークルOSという統合OSの上で集中管理するアーキテクチャが進んでいます。ビークルOSの標準化には、欧州が推進するAUTOSARやテスラなどのテクノロジー企業系などが覇権を争っています。

さらにこれらのソフトウェアサービスをクラウドから遠隔管理できるように、バックエンドにクラウドPaaSが存在し、車のマイナーチェンジはソフトウェアでできてしまう世界になっています。

業務ソフトウェアの世界を振り返ると、まさに車載ソフトウェアと同じようなアーキテクチャやビジネスモデルを辿っているように見えます。既存ソフトウェアベンダー対GAFAによるクラウドOSの覇権争いや、業務アプリケーションをどんどんコンテナ化し統合管理できるようにするなど、共通点が多くあります。

これから起こり得る未来を、車載ソフトウェアの世界から占うことができるかもしれません。

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