正味現在価値 (NPV)
設備投資案の評価は企業の意思決定者にとって重要な仕事であり、とても難しい問題です。最近の私の経験ですが、あるお客様が2年前にリリースしたシステムに対し改善提案をしたところ、「5年の減価償却が終わるまではシステムを変えたくない。」と言われ、困ったことがあります。大きなコストをかけて作ったシステムだから償却し終えるまでは使い続けないともったいないという発想だと思います。
一般的には設備投資をする際の意思決定としては、正味現在価値法(Net Present Value: NPV)、内部収益率法、回収期間法など、様々な計算方法を使って定量的に将来儲かるかどうかを算出し、判断をすることになります。今回は私の復習も兼ねて、正味現在価値の考え方をまとめました。
ここでキーとなる考え方が3つあります。「現在価値」、「埋没費用」、「機会費用」です。
ある投資をしたときに将来受け取ることのできるキャッシュを現在の価値に換算することを「現在価値」といい、毎年の利子率(割引率)を使って計算します。例えば割引率5%で来年105万円キャッシュが入るとすると、現在のお金の価値では100万円とみなす。という考え方です。
正味現在価値法では、投資した場合に得られるキャッシュフローの現在価値から投資しない場合のキャッシュフローの現在価値を引いて、さらに投資額を引いたものがプラスだったら、投資すべきという、とても考え方としては分かりやすいシンプルな評価法です。
このとき過去の投資額は影響しないというのがポイントです。これは「埋没費用(サンクコスト)」と言って、投資してもしなくてもかかる費用なので考慮しないというコストになります。
もう一つ「機会費用」はある選択をした時に、得ることができなかった費用のことを指します。投資をした場合には、投資をしなかった場合のキャッシュフローが機会費用になります。
つまり正味現在価値法を言い換えると、投資した場合に儲かるであろうキャッシュフローの現在価値から機会費用の現在価値と投資額を引いたもので判断をするということになります。
こう書くと簡単なように思いますが、年間のキャッシュフローは減価償却費とか税金とか売却価格などが影響してくるので、実は結構計算が面倒くさいです。
冒頭のお客様に対しても、今投資したら今後これだけ儲かりますので、これまでの投資額は気にしないでください!とバシッと言ってみたいですね。
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