ソーシャルライフサイクル (Social Lifecycle)

先日面白いニュースがありました。「みずほFGが石炭火力の建設資金の残高を2040年までにゼロにできる見通し」というものです。
環境NGOが株主総会で、温暖化防止のパリ協定に沿った投資をするよう定款の変更を求めた株主提案を出し、否決はされたものの3割の賛同を得るという、日本では珍しい株主提案がなされたことが大きく影響しています。
これにより、みずほFGは取引先の電力会社などへの事業構造の転換を促していくそうです。

銀行による火力発電などへの投資量は日本の3大メガバンクが世界で1位から3位を占めており、機関投資家から厳しい批判を浴びている中、このニュースは大きな変化に思えました。コロナ禍による世の中の環境・衛生に対する過敏な雰囲気もこの判断を後押ししている気がします。

他にも最近の社会環境の変化は目に見えるほど速いスピードで変わってきているのが感じられます。リモートワークが受け入れられてきたことや、食事や各種サービスを近隣地域で済まそうとすることで地域分散化が進み始めたりしています。日本の場合、キャッシュレス化や公共サービスのデジタル化などが他国に比べ遅れていることも体感することができ、これからどんどんデジタル化が進んでいく動きも見られます。

冒頭のニュースに戻りますが、なぜ環境NGOはみずほFGの株主になって、このような提案をしたのか?ということですが、お金の出所である銀行の行動を変えることが社会全体を変えるスタート地点だからだろうと思います。

銀行が電力会社に脱炭素化を求めていくと、電力会社は太陽光発電など再生可能エネルギーを推進していくことになります。そうすると分散型電源のプラットフォームが作られていき、電気自動車や蓄電池の進化により工場やビル、さらに家庭までがエネルギーの生産者としてつながっていきます。
これらのインフラは各種の製造業の事業構造も変えていくと思います。自動車業界は個人に売っていた車がシェア主体になり、タクシー会社などに大量販売するモデルになるかもしれません。そしてその先のサービス業はますますデジタルと融合していくでしょう。VR/ARが一般化して家にいながら様々なサービスを受けられるようになるかもしれません。

私が一番インパクトがある変化が来ると思うのは、これらにより私たち市民が消費者から生産者にもなりうる、「プロシューマー化」が進むことだと思います。プロシューマーとはプロデューサー(生産者)とコンシューマー(消費者)が融合した造語ですが、サービスを受ける消費者だけでなく、個人が持つ付加価値を他人に提供していく生産者になっていくという意味です。
メルカリやUberなどのシェアリングエコノミーもその一種ですし、YouTuberも広い意味で自分の価値を売るプロシューマーです。これから様々なサービスが企業から個人へ一方通行に提供されるのではなく、双方向に提供しあう社会になっていくのではないかと思います。

長くなりましたが、このようにして市民の意識は生産者の視点をより強くもつことになり、ひいては社会全体を良くしていこうという、プラスのサイクルが回るのではないか。ものすごく面白い時代に突入してきたと感じました。

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